【シリーズ:腸の問題を考える第1回】腸は“はらわた”である――中医学で読む腸疾患の地図

腸は“はらわた”である――中医学で読む腸疾患の地図

腸の病気というと、潰瘍性大腸炎、クローン病、過敏性腸症候群(IBS)、感染性腸炎、虚血性腸炎などがよく知られています。下痢、腹痛、血便、体重減少――症状は似て見えるのに、経過も体質も人によって大きく違う。ここに「腸疾患の難しさ」があります。

中医学は、この“違い”を説明するのが得意です。理由は単純で、腸を「大腸・小腸という部品」だけで見ないからです。中医学で腸は、しばしば“はらわた”として捉えられます。つまり口から肛門までの消化器の連なり全体。食べたものが、どこで受け取られ、どう変化し、何が運ばれ、何が捨てられるのか――この流れを、気血津液と臓腑・経絡の働きとして読み解きます。

この流れの核心は「気血を作る土台」です。脾胃が受け取り、運び、肺が宣発粛降で水道を整え、肝が気機をのびやかにし、腎が下焦を固めて“漏れ”を防ぐ。腸の慢性疾患は、この連携が長く崩れた状態とも言えます。だから腸が荒れると、貧血、冷え、肌荒れ、不眠、焦り、動悸、倦怠感など、全身のサインが連動して出てきます。「腸だけの問題」では終わらないのです。

では、同じ“血便”でも、中医学ではどう見分けるのでしょうか。大きくは三つの軸で整理できます。
①陰陽:冷え・水・虚から起きる“陰の漏れ”か、熱・乾・実から起きる“陽の迫り”か。
②臓腑:脾の統血、腎の固摂、心火と上下の不均衡、肝陽・陰虚、肺虚からの内熱など、どこが主因か。
③病因:外邪(湿熱・寒湿・疫毒)か、内因(情志・飲食・労倦)か、あるいはその混在か。

「潰瘍性大腸炎は陰の疾患、クローン病は陽の疾患」

潰瘍性大腸炎では、組織が弱って守りが薄くなり、統血できずに漏れる――そんな“陰の崩れ”が前景に出やすい。一方クローン病では、熱や乾燥、気血の逼迫、炎症の強さが目立ち、“陽の昂ぶり”として読める場面が多い。もちろん現実は混在しますが、まず読者に地図を渡すには、この陰陽の二分はとても親切です。

次回は「腸の出血」をテーマに、陰陽・臓腑・外因内因の三軸をもう一段深く掘ります。同じ血でも、色・量・粘液・痛み・冷え・口渇・舌象・睡眠など、組み合わせが変われば“病機”が変わる。腸疾患は、便が語る情報量が非常に多い領域です。怖がるのではなく、読み解く。そこから養生と治療の道筋が見えてきます。
※本稿は一般向けの中医学的解説で、診断や治療の代替ではありません。症状が強い場合は医療機関での評価も併用してください。

【シリーズ:腸の問題を考える第2回】

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