【シリーズ:腸の問題を考える第8回】感染性腸炎を中医学で読む

感染性腸炎を中医学で読む――「外から来た」だけで終わらせない

感染性腸炎は、細菌やウイルスなど“原因が比較的はっきりしている”腸炎です。西洋医学では原因菌の同定や脱水・炎症の評価が中心になり、治療方針も立てやすい。一方で中医学では、感染=外因と決めつけず、**「なぜその外因を受けて発症したのか」**まで含めて考えます。

同じウイルスに触れても、すぐ下痢になる人と、何事もなく通り過ぎる人がいる。ここに中医学の視点が入ります。中医学では、外邪(湿熱・寒湿・疫毒など)が侵入するだけでなく、もともと体内に気血津液が“閉じ込められた状態”(=巡りの詰まり、湿の停滞、熱のこもり、あるいは脾胃の弱り)があると、外邪が「燃えやすい薪」を得て一気に症状が出る、と捉えることがあります。


1) 検査で何がわかるか(西洋医学の強み)

感染性腸炎の検査でよく用いられるのは、便検査、血液検査、画像検査、内視鏡検査です。ここではそれぞれの“得意分野”を押さえておくと、安心して使い分けができます。

便検査

病原体(細菌・ウイルス・寄生虫など)を推定・特定しやすい。
**「何に感染したか」**を掴むのが強みです。

血液検査

炎症の程度、脱水の影響、全身状態の評価に役立ちます。
**「体がどれだけ消耗しているか」**を見ます。

画像検査

腸の腫れ、合併症の有無、ほかの病気との鑑別に使われます。
**「危ないサインが隠れていないか」**の確認に強い。

内視鏡検査

粘膜の炎症の程度、潰瘍や出血、他疾患(IBDなど)との鑑別に有用。
**「腸の現場がどうなっているか」**が見える検査です。


2) 中医学視点での“優位点”――発症の土台と、治り方の差を説明できる

西洋医学の検査は「原因と重症度」を捉えるのが得意です。
中医学の優位点は、そこに加えて、

  • なぜ感染が成立したか(受けやすさ)

  • なぜ長引くのか(回復の遅れ)

  • なぜ同じ感染でも症状が違うのか(下痢・腹痛・吐き気・発熱の組み合わせ)

を、気血津液と臓腑(特に脾胃・肺・肝・腎)の連携として整理できることです。

たとえば感染性腸炎は、よく「湿熱」と「寒湿」に二分されますが、これは単なる“熱い/冷たい”ではなく、腸内の環境が

  • 蒸れて熱がこもる(湿熱)

  • 冷えて巡りが止まり、水が停滞する(寒湿)
    どちらに傾いているか、という見方です。

さらに、同じ湿熱でも「食の詰まり(食滞)」が土台にある人は悪化しやすく、同じ寒湿でも「脾胃虚弱」が土台だと回復が遅れやすい。こうした“背景”が見えるのが中医学です。


3) 舌診での補完――「いま腸の中で何が起きているか」を推定する

舌診は、病原体を当てる検査ではありません。けれど、感染の勢い・体内環境・回復力の方向性を補完できます。

湿熱が強いサイン

  • 黄苔、黄膩(ねっとり黄い苔)

  • 口渇、臭いの強い便、肛門の灼熱感、切迫便意が出やすい

寒湿が強いサイン

  • 白く湿った苔、舌が潤って胖(むくみ)

  • 冷えると悪化、腹が冷たい、痛みが温めで楽になりやすい

食滞(食べ過ぎ・胃腸の詰まり)が絡むサイン

  • 厚苔、べたつき、舌苔が重い

  • げっぷ、胃もたれ、腹満が前に出やすい

回復期に“気が足りない”サイン

  • 舌が淡い、力がない、苔が薄くなっていく

  • 下痢が長引く、食が進まない、疲れやすい(この段階は「攻める」より「立て直し」が要)


まとめ

感染性腸炎は「原因が特定できる病気」だからこそ、西洋医学の検査で原因と重症度を押さえるのが強い。一方で中医学は、外因だけで片づけず、体内の詰まり(気血津液の閉塞)と受けやすさ、そして回復の個人差を説明し、舌診などで“いまの体内環境”を補完できる。
次回は、湿熱・寒湿・食滞・回復期の虚といった病機ごとに、「どういう暮らしが悪化因子になりやすいか」「回復を邪魔する習慣は何か」を、養生設計として整理していきます。

※本稿は一般向けの中医学的解説で、診断・治療の代替ではありません。強い症状、血便、高熱、脱水などがある場合は医療機関での評価を優先してください。

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