クローン病を「陽の迫り」として読む――湿熱・乾燥・気血の逼迫が腸を焼く
クローン病は、口から肛門まで消化管のどこにでも炎症が起こりうる病気で、腹痛、下痢、体重減少、発熱、倦怠感などが目立ちます。潰瘍性大腸炎と比べると、病変の範囲が広く、深く、そして“動きが激しい”印象を持つ人も多いでしょう。
中医学では、この「激しさ」「熱っぽさ」「炎症が深く入りやすい」性質に注目し、クローン病をしばしば**「陽の迫り」**として読みます。
ここで言う“陽”とは、単に元気という意味ではありません。熱、乾燥、昂ぶり、上へ突き上げる力、そして血を押し出す勢い。この勢いが腸の粘膜や血絡を逼迫すると、炎症が抜けにくくなり、痛みや出血、下痢が強く出やすくなります。
今回は、クローン病を理解するうえで実用的な3つのパターンを示します。実際には混在しますが、「いま何が主役か」を掴むと、養生の組み立てが変わります。
1)湿熱:腸の中が“蒸れて熱い”
もっとも代表的な型です。湿(じめつき・停滞)と熱(炎症・昂ぶり)が組み合わさり、腸が“蒸れたような状態”になります。粘液、臭い、切迫、灼熱感が出やすいのが特徴です。
観察ポイント
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便の臭いが強い、粘液が多い
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便意が切迫しやすい(急に来る)
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肛門が熱い、灼ける感じ
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口渇、体が熱っぽい、寝汗
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舌苔が黄〜黄膩、ねっとりしやすい
養生の軸(方向性)
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「食の熱源」を減らす:辛味・揚げ物・甘い物・アルコールが引き金になりやすい
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冷やし過ぎは禁物ですが、ここではまず**“蒸れを抜く”発想**が要点
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生活の中の“熱化”要因(夜更かし・過密スケジュール・強いストレス)も湿熱を固定化します

2)乾燥・陰液不足:粘膜が乾いて裂け、炎症が深くなる
クローン病で体重減少や乾きが強い人は、この視点が役立ちます。熱が長引くと、腸の潤い(陰液)が削られ、粘膜の防壁が薄くなって、炎症が“深く入りやすい”状態になります。いわば、火が燃え続けて水が足りない状況です。
観察ポイント
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口や喉の乾き、皮膚の乾燥
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便は回数が多いのに量が少ない、しぶり腹
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微熱が続く、疲れやすい
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舌が紅〜絳、苔が薄い・剥げる、裂紋が出やすい
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夜に悪化しやすい/眠りが浅い
養生の軸(方向性)
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ここで単純な「清熱」だけを続けると、さらに乾いて回復が遅れることがあります
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重要なのは、熱を静めながら潤いを回復させるという二段階
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刺激物・カフェイン・睡眠不足は乾きを加速するので、まず生活の“乾燥因子”を止めることが現実的です
3)気血の逼迫(肝の関与・瘀):ストレスで炎症が暴れる
クローン病では、精神的ストレスや緊張が引き金になって悪化するケースが少なくありません。中医学では、肝が気機を主るため、ストレスが続くと気が詰まり、やがて熱に変化し、血の巡りも乱れます。すると腸は「押され」「急かされ」て、痛み・下痢・出血が強くなりやすい。
観察ポイント
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緊張・怒り・寝不足の後に悪化する
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腹痛が強く、張るように痛む
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残便感やしぶり腹が混じる
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舌の辺縁が紅い、あるいは紫暗や瘀点が見えることも
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ため息が多い、胸がつかえる、肩首が固い
養生の軸(方向性)
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この型は「食事だけ」では安定しにくいのが特徴です
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呼吸・睡眠・緊張の解き方(散歩、ゆるい運動、入浴、香り、会話)が治療の一部になります
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“頑張って治す”ほど悪化する人は、肝の気機が絡んでいることが多い。ここを自覚するだけで戦い方が変わります
まとめ:クローン病は「熱・乾・逼迫」のどれが主役かを見る
クローン病を「陽の迫り」として読むと、主役は大きく三つです。
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湿熱(蒸れて熱い)
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乾燥・陰液不足(潤いが削られる)
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気血の逼迫(ストレスで暴れる)
同じ腹痛・下痢でも、主役が違えば、やるべきことの順番が変わります。
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