【シリーズ:腸の問題を考える第5回】クローン病を「陽の迫り」として読む――湿熱・乾燥・気血の逼迫が腸を焼く

クローン病を「陽の迫り」として読む――湿熱・乾燥・気血の逼迫が腸を焼く

クローン病は、口から肛門まで消化管のどこにでも炎症が起こりうる病気で、腹痛、下痢、体重減少、発熱、倦怠感などが目立ちます。潰瘍性大腸炎と比べると、病変の範囲が広く、深く、そして“動きが激しい”印象を持つ人も多いでしょう。

中医学では、この「激しさ」「熱っぽさ」「炎症が深く入りやすい」性質に注目し、クローン病をしばしば**「陽の迫り」**として読みます。
ここで言う“陽”とは、単に元気という意味ではありません。熱、乾燥、昂ぶり、上へ突き上げる力、そして血を押し出す勢い。この勢いが腸の粘膜や血絡を逼迫すると、炎症が抜けにくくなり、痛みや出血、下痢が強く出やすくなります。

今回は、クローン病を理解するうえで実用的な3つのパターンを示します。実際には混在しますが、「いま何が主役か」を掴むと、養生の組み立てが変わります。


1)湿熱:腸の中が“蒸れて熱い”

もっとも代表的な型です。湿(じめつき・停滞)と熱(炎症・昂ぶり)が組み合わさり、腸が“蒸れたような状態”になります。粘液、臭い、切迫、灼熱感が出やすいのが特徴です。

観察ポイント

  • 便の臭いが強い、粘液が多い

  • 便意が切迫しやすい(急に来る)

  • 肛門が熱い、灼ける感じ

  • 口渇、体が熱っぽい、寝汗

  • 舌苔が黄〜黄膩、ねっとりしやすい

養生の軸(方向性)

  • 「食の熱源」を減らす:辛味・揚げ物・甘い物・アルコールが引き金になりやすい

  • 冷やし過ぎは禁物ですが、ここではまず**“蒸れを抜く”発想**が要点

  • 生活の中の“熱化”要因(夜更かし・過密スケジュール・強いストレス)も湿熱を固定化します


2)乾燥・陰液不足:粘膜が乾いて裂け、炎症が深くなる

クローン病で体重減少や乾きが強い人は、この視点が役立ちます。熱が長引くと、腸の潤い(陰液)が削られ、粘膜の防壁が薄くなって、炎症が“深く入りやすい”状態になります。いわば、火が燃え続けて水が足りない状況です。

観察ポイント

  • 口や喉の乾き、皮膚の乾燥

  • 便は回数が多いのに量が少ない、しぶり腹

  • 微熱が続く、疲れやすい

  • 舌が紅〜絳、苔が薄い・剥げる、裂紋が出やすい

  • 夜に悪化しやすい/眠りが浅い

養生の軸(方向性)

  • ここで単純な「清熱」だけを続けると、さらに乾いて回復が遅れることがあります

  • 重要なのは、熱を静めながら潤いを回復させるという二段階

  • 刺激物・カフェイン・睡眠不足は乾きを加速するので、まず生活の“乾燥因子”を止めることが現実的です


3)気血の逼迫(肝の関与・瘀):ストレスで炎症が暴れる

クローン病では、精神的ストレスや緊張が引き金になって悪化するケースが少なくありません。中医学では、肝が気機を主るため、ストレスが続くと気が詰まり、やがて熱に変化し、血の巡りも乱れます。すると腸は「押され」「急かされ」て、痛み・下痢・出血が強くなりやすい。

観察ポイント

  • 緊張・怒り・寝不足の後に悪化する

  • 腹痛が強く、張るように痛む

  • 残便感やしぶり腹が混じる

  • 舌の辺縁が紅い、あるいは紫暗や瘀点が見えることも

  • ため息が多い、胸がつかえる、肩首が固い

養生の軸(方向性)

  • この型は「食事だけ」では安定しにくいのが特徴です

  • 呼吸・睡眠・緊張の解き方(散歩、ゆるい運動、入浴、香り、会話)が治療の一部になります

  • “頑張って治す”ほど悪化する人は、肝の気機が絡んでいることが多い。ここを自覚するだけで戦い方が変わります


まとめ:クローン病は「熱・乾・逼迫」のどれが主役かを見る

クローン病を「陽の迫り」として読むと、主役は大きく三つです。

  1. 湿熱(蒸れて熱い)

  2. 乾燥・陰液不足(潤いが削られる)

  3. 気血の逼迫(ストレスで暴れる)

同じ腹痛・下痢でも、主役が違えば、やるべきことの順番が変わります。

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