潰瘍性大腸炎を“陰の漏れ”として読む――脾不統血・腎虚・上熱下寒の3パターン
潰瘍性大腸炎は、血便や粘血便、下痢、腹痛が長く続き、ときに良くなったと思ったら再燃する――そうした経過を取りやすい病気です。中医学では、この「長引く」「繰り返す」「粘膜が守れない」性質に注目し、しばしば潰瘍性大腸炎を**“陰の漏れ”**として読みます。
ここで言う“陰”とは、単なる冷えではありません。組織を守る力、潤い、修復力、そして血を血管内に留める統血・固摂の働きを含む概念です。守りが薄くなると、腸粘膜は荒れやすく、血は漏れやすく、便は安定しません。
今回は、潰瘍性大腸炎を理解するうえで実用的な3つのパターンを提示します。実際は混在しますが、「自分はどれが主役か」を掴むと、養生の優先順位が決まります。
1)脾不統血:守りが弱く、血が“漏れる”
もっとも基本の型です。脾は「運化(消化吸収と水のさばき)」と「統血(血を統べる)」を担います。脾が弱ると、食べたものが気血に変わりにくく、粘膜の修復材料が不足し、さらに血をまとめる力も落ちて出血がだらだら続く方向へ傾きます。
観察ポイント
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疲れると悪化する/休むと少し楽
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食後の眠気、だるさ、胃もたれ
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軟便〜下痢が続きやすい
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出血は鮮紅より「薄い赤〜暗め」が混じることも
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舌は淡く、やや胖、苔は厚め・ねっとりが出やすい
養生の軸(方向性)
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「食べ過ぎを止める」が第一。回復材料の補給より、まず負担を減らす
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甘い物・小麦・乳製品・脂っこい物で悪化しやすい人は、脾の粘滞が背景にあることが多い
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温め過ぎで悪化する人もいるので、“温めれば良い”ではなく、胃腸が処理できる量と質に合わせる

2)腎虚・下焦不固:下の栓がゆるみ、漏れが止まらない
腎は下焦を固め、漏れを防ぐ「栓」です。潰瘍性大腸炎が慢性化し、年単位で再燃を繰り返すと、脾だけでなく腎の固摂が落ち、下腹が定まらないような状態になります。
観察ポイント
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下腹の冷え、腰のだるさ
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朝方に症状が出やすい
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足の冷え、むくみ、頻尿・夜間尿
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体力が落ちるほど出血・下痢が出やすい
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舌は淡く胖、潤いが多い/苔は白く湿りやすい
養生の軸(方向性)
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ここで大事なのは「強い刺激で奮い立たせない」こと
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冷飲、夜更かし、過労が直撃しやすいので、睡眠と体温の安定が治療の一部
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下半身を冷やさない(腹巻・足首・腰の保温)は、単なる民間の知恵ではなく“下焦の固摂”の実践
3)上熱下寒:顔は熱いのに、腸は冷えて漏れる
「ほてるのに下痢」「イライラするのに下腹は冷える」――こうした矛盾した体感は、潰瘍性大腸炎でしばしば見られます。中医学ではこれを上熱下寒として整理します。
上(心・肝)が熱を帯びて興奮し、下(腎・下焦)は冷えやすく守りが弱い。つまり、上は燃えているのに、下は栓がゆるい。結果として、腸の粘膜は落ち着かず、血が漏れやすい。
観察ポイント
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顔はほてる/のぼせるが、足は冷たい
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眠りが浅い、夢が多い、焦りやすい
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ストレスで腸が一気に崩れる
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口は渇くのに、下痢は冷えで悪化する
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舌は先が紅く、根元は白っぽい・湿るなど上下差が出やすい
養生の軸(方向性)
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“熱を冷ます”だけだと、下の冷えが強くなり漏れが止まりにくい
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“温める”だけだと、上の熱が増えて再燃しやすい
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だから優先順位は、上の興奮(心肝)を鎮めながら、下焦を守るという二段構えになります
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具体的には「夜の過活動を止める(スマホ・仕事・刺激物)」「呼吸を深くする」「下半身を温める」「冷飲を避ける」など、生活の設計が鍵になります
まとめ:潰瘍性大腸炎は“守りの設計”で変わる
潰瘍性大腸炎を“陰の漏れ”として読むと、ポイントは明確です。
**粘膜を守る材料(気血津液)**と、漏れを止める統血・固摂。この二つが主戦場になります。
次回(第5回)は、クローン病を「陽の迫り」として読むパターンへ進みます。熱・乾・気血の逼迫、そして炎症の強さがどこから生まれるのか――同じ腸疾患でも“動き方”が違う世界を解説します。
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