【シリーズ:腸の問題を考える第3回】血便を読み解く観察ポイント――色・粘液・痛み・便意・冷え・口渇・舌で“傾向”をつかむ

血便を読み解く観察ポイント――色・粘液・痛み・便意・冷え・口渇・舌で“傾向”をつかむ

前回は、腸の出血を「漏れる(陰)/迫る(陽)」、そして臓腑・病因で分類しました。今回はさらに一歩進めて、読者が自分の“傾向”をつかむための観察ポイントを整理します。
大切なのは「自己診断」ではなく、悪化の引き金と体の方向性を知ること。腸は変化が便に出やすいので、観察の価値が高い領域です。


1)血の色:鮮紅は“熱の押し出し”、暗紅は“停滞・冷え寄り”

鮮紅(あざやかな赤)

腸内で熱が強いと、血が押し出されやすくなります。中医学では“迫血”のイメージ。
一緒に出やすいサインは、口渇、イライラ、肛門の灼熱感、臭いが強い便、睡眠が浅いなど。
ストレス・辛い物・飲酒・夜更かしで悪化しやすい人はこの方向に傾きます。

暗紅(暗い赤、えんじ色寄り)

血が“巡らずに停滞”している、あるいは“冷え・虚”が絡んで血がきれいに動けない状態で起きやすい。
慢性化、疲れると出やすい、冷えると増える、下腹が重い――という人に多い傾向です。
※黒っぽい便(タール便様)は上部消化管の可能性もあるため、ここは必ず医療機関の評価も併用してください。


2)粘液:守りの膜が剥がれているサイン

粘血便の“粘液”は、中医学的には二つの方向で見ます。

  • 湿(じめつき):水分代謝が重く、腸内がぬるぬるしている。脾の運化が落ちていると出やすい。

  • 陰液の損傷:熱や炎症で腸の潤いが削られ、代償的に粘液が目立つこともある。

判断のコツは「喉の渇き」と「冷え」。
渇きが強く熱っぽいなら後者、冷えやむくみが強いなら前者を疑う、という順番で見ていくと整理しやすいです。


3)痛み:刺す痛みは“滞り”、シクシクは“虚”、灼けるは“熱”

腹痛はかなり重要な手がかりです。

  • 刺す・固定した痛み:気血の滞り(瘀血寄り)。ストレスや緊張で増悪しやすい。

  • シクシク・力が入らない痛み:虚(脾腎の弱り)寄り。疲労で悪化しやすい。

  • 灼ける、熱感を伴う痛み:熱(湿熱・火)寄り。便の臭いが強い、肛門が熱い、口渇がセットになりやすい。

  • 冷えると痛む・温めると楽:寒・虚寒寄り。下腹の冷えや手足の冷えと連動します。


4)便意の切迫:急ぐほど“熱・気の暴れ”、出ないのに行きたいのは“気の詰まり”

  • 急に来る・我慢できない(切迫):腸の熱や炎症が強い、または気が下へ急き立てられている状態。

  • 行きたいのに出ない・残便感:気機の詰まり(肝の気鬱)や、湿の停滞で“通りが悪い”状態。

IBS傾向が強い人は、この「残便感」「出ないのに行きたい」がストレスと連動します。ここを自覚できるだけで、対策の軸が立ちます。


5)冷え/口渇:どちらが勝っているかで“陰陽”が決まる

腸疾患では、冷えと熱が同居することもあります。そこで大事なのは「どちらが主役か」。

  • 冷えが主役:下腹が冷たい、足が冷える、温めると楽、むくみ、尿が多い。→“漏れ”の方向へ。

  • 口渇が主役:冷たい物が欲しい、寝汗、ほてり、眠りが浅い、口が乾く。→“迫る”の方向へ。

  • 上熱下寒(顔はほてるのに足が冷える):心火・肝陽と、腎・下焦の弱りが上下で分断されているサインになり得ます。


6)舌象:腸の状態は“苔”に出やすい

舌は腸の状態を反映しやすい部位です。目安としては次のように見ます。

  • 厚い苔・ねっとり(膩苔):湿が重い/消化の粘滞。食べ過ぎ・甘い物・油で悪化しやすい。

  • 黄苔:熱が絡むサイン。臭い・灼熱感・切迫とセットになりやすい。

  • 苔が薄い・剥げる:腸の潤い・修復力が落ちているサイン。長期化や陰液不足の傾向。

  • 舌が淡く胖(むくんで大きい):脾腎の弱り、水が偏る方向。漏れやすさと関連。

  • 舌が紅い:熱が勝っている方向。焦りや不眠と連動しやすい。


まとめ:観察は「治し方の地図」になる

血便は“怖いサイン”であると同時に、体の方向性を示す情報です。
色(鮮紅/暗紅)+粘液+痛み+便意+冷え/口渇+舌象をセットで見ると、自分が「漏れ(陰)」寄りか「迫り(陽)」寄りかが見えてきます。

次回は、この観察ポイントをもとに、代表例として

  • 潰瘍性大腸炎を“陰の漏れ”として読むパターン(脾不統血・腎虚・上熱下寒など)

  • クローン病を“陽の迫り”として読むパターン(湿熱・肝鬱化火・瘀)
    を、さらに具体的な養生の方向へ落としていきます。

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