三魂七魄と七情の話。こころとからだの“天気図”としての中医学
今日は、東洋医学の中でも少し不思議で、とてもやさしい考え方――「三魂七魄」と「七情」のお話をまとめてみます。
むずかしい理論というよりは、「私たちのこころとからだは、目に見えないものと一緒に動いている」という、そんな世界観を感じるための小さな入り口として読んでみてくださいね。
1.からだは「肉体」と「見えないもの」の二重構造
東洋医学の土台には、道教・陰陽五行・儒教などの思想が折り重なっています。その中で生まれたのが、
- 三魂(さんこん) … 目に見えない、上へとふわっと昇る“こころ・意識”の側面
- 七魄(しちはく) … 肉体にぴたっと宿る、本能・反射・感情の生々しい動き
という考え方です。
イメージで言うと──
魂(こん)は「空にのぼる風」
魄(はく)は「地面に足をつけている身体」
私たちは、この二つが重なり合って「いまここ」に立っている、そんなふうに捉えます。
2.「三魂」=上へ広がるこころの力
三つの魂は、名前はむずかしくても、役割はとてもシンプルです。
- 夢を見る力、イメージする力
- クリエイティブなひらめき
- 眠りの中で心を整理する働き
こうした“上に広がる動き”を支えているのが魂の側です。
ここが弱ると、
- 夢も希望も持ちにくい
- ぼんやりして集中できない
- 夜になっても心が落ち着かない
といった“こころのかさつき”が出てきます。

3.「七魄」=からだに刻まれた七つの感情反応
一方の七魄は、こんな瞬間に表れます。
- 驚いたときにビクッと体がすくむ
- 悲しいときに胸がぎゅっと締めつけられる
そんな「感情が身体に刻まれている側」が七魄です。
東洋医学では、感情を「七情」として整理します。
- 喜(よろこび) … 心
- 怒(いかり) … 肝
- 憂・悲(ため息・かなしみ) … 肺
- 思(くよくよ・考えすぎ) … 脾
- 恐・驚(おそれ・びっくり) … 腎
それぞれが五臓とつながり、感情の揺れがそのまま臓腑のゆらぎになると考えます。
たとえば、
- ずっと怒りを飲み込んでいると、肝の気がつまる
- 長く悲しみを抱え続けると、胸が苦しくなり、呼吸が浅くなる
といったイメージですね。
4.三魂七魄と七情は、“こころの天気図”
三魂七魄と七情を、少しイメージで言い換えてみます。
- 三魂 … 心がどこへ向かっているかを示す“羅針盤”
- 七魄・七情 … いまの心と体の“天気図”
たとえば、
- 魂がしぼんでいるとき … 未来が見えず、夢を見る力が弱る
- 魄が重く濁っているとき … 体がだるく、感情が同じところでループする
そんなとき中医学は、気・血・津液・五臓というレイヤーから、
「どこが冷えている? どこが熱くなりすぎている?」
と、こころの天気を読み直してくれる学問なんです。
5.Rからの小さなワーク:自分の「気」を眺めてみる
最後に、三魂七魄を“感じる”ための、小さなワークをひとつ。
- 目を閉じて、胸のあたりにそっと意識を向けます。
- そこに吹いている“風”をイメージしてみてください。
・すーっと通り抜ける風か
・ぐるぐる渦を巻いている風か
・ぴたりと止まって重たい空気か - その感覚に、ただ「気がこうなっているんだな」と名前をつけるだけでOKです。
科学では測れないけれど、東洋医学はこうした感覚をとても大事にしてきました。
からだは「魂のうつわ」であり、感情は「気が通り過ぎるときの風の音」。
そんなふうに、自分のこころと体を、少しだけやさしく眺める時間を持ってあげてくださいね。
【投稿:40代女性】

