最近、物忘れが増えたと感じたら ――中医学から見た「記憶力」の話

最近、物忘れが増えたと感じたら ――中医学から見た「記憶力」の話

こんにちは。鍼灸師の田辺です。

「人の名前がすぐに出てこない」
「さっき何を取りに来たのか忘れる」
「同じ話を何度もしてしまう」

こうした“物忘れ”の相談は、年齢に関係なく年々増えています。
しかし多くの方が、
「もう歳だから仕方ない」「脳の問題だろう」
と、少し諦めた表情をされるのです。

中医学では、物忘れを単なる老化や脳だけの問題としては見ません。
そこには、体全体のバランスの乱れが関係しています。


中医学で考える「記憶力」はどこから生まれるのか

中医学では、記憶力や集中力は主に
「腎」「心」「脾」
という三つの臓腑と深く関係すると考えます。

  • :生まれ持った生命力・記憶の土台
  • :思考・意識・精神活動の中心
  • :情報を理解し、血を生み出す働き

特に腎は「精(せい)」という、
記憶や成長、老化に関わるエネルギーを蓄えている臓腑です。

物忘れが気になり始めた時、
腎の力が弱っていたり、
血(けつ)や気(き)が十分に巡っていないことが多いのです。


よくある誤解 ――「脳だけ鍛えればいい」

クロスワードや計算ドリルを頑張っているのに、
物忘れが改善しない、という方も少なくありません。

中医学的に言えば、
脳に栄養やエネルギーが届いていない状態で使い続けている
ようなものです。

これは、美容で言えば
「血行が悪いまま高級化粧品を使う」
フィットネスで言えば
「疲労が抜けないまま筋トレを続ける」
のに近い状態です。

土台を整えずに刺激だけを加えても、
本来の力は発揮されません。


臨床の一例 ――「最近、頭がぼんやりする」

以前、60代の男性が来院されました。
大きな病気はなく、検査でも異常は見当たらない。
それでも

「仕事の段取りを忘れる」
「会話に集中できない」
「頭に靄がかかった感じがする」

という訴えが続いていました。

お体を診ると、
・睡眠が浅い
・腰や下半身の冷え
・食後の強い眠気
が目立っていました。

これは中医学でいう
「腎虚」と「脾の弱り」
が重なった状態です。

鍼灸で腎と脾を補い、
食事と生活リズムを整えていただいたところ、
数か月後には

「頭がすっきりして、忘れ物が減った」
「朝の目覚めが良くなった」

と変化が現れました。


今日からできる「物忘れ養生」

難しいことをする必要はありません。
まずは体の土台を整えることです。

  • 夜更かしを避け、腎を休ませる
  • 冷たい飲食を控え、脾を守る
  • 軽い散歩や体操で気血を巡らせる

これらはすべて、
記憶力だけでなく、
肌の艶、姿勢、疲れにくさにもつながります。


物忘れは「体からの便り」

物忘れは、決して怖いだけのサインではありません。
中医学では、
「今の生き方を見直す合図」
と捉えます。

脳だけを見るのではなく、
体全体の流れを見る。
それが、古くて新しい中国医学の視点です。

投稿者 田辺

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